発売前から興味を持ってはいたものの、発売日にはベトナム出張中で購入できず、その後も「受取りできない」という理由で予約注文を拒否されてきた TAMRON 28-75mm F/2.8 Di III RXD を入手しました。
夏休みの北海道旅行を実現するため、いつもにも増して出張を断り続けた結果、最近では珍しく何週間も日本に長居することになり、図らずも予約注文を行える条件が整ったのです。
もちろん、北海道にもこのレンズを持っていきました。
約2ヶ月の間におよそ 6,000 枚ほど撮影するのに使用しましたが、購入前に想定したとおりのレンズで「明るい」ことと「寄れる」ことから、非常に使いやすかったです。
屋外での使用はもちろん、暗い室内において料理などのテーブルフォトを撮影する場合にも F/2.8 の明るさと 0.19m の最短撮影距離が強力な武器になりました。
ただ「明るくて」「寄れる」だけでなく、焦点距離を 28-75mm まで変動できるズームレンズなので、文字通りに用途を選ばずに使えることが心強く感じられました。
とくに荷物の量を極力少なくしたい旅行時においては、明るいズームレンズが1本あるだけで撮影できる対象が大きく変わってきます。
薄暗い夕暮れ時、光源の乏しい博物館、動き回る生き物など、このレンズを持ってきていて良かったと思えたことは数え切れないほどあります。
しかし、旅行を終えた直後にいろいろ考えて、結局、手放すことに決めました。
というのも、TAMRON 28-75mm F/2.8 Di III RXD は、あくまで(35mmフルサイズイメージセンサー向け)ズームレンズの中では小型軽量なのであって、長時間、持ち歩いていると質量も体積も気になってきます。
たとえば、SONY Sonnar T* FE 55mm F1.8 ZA のような小型の単焦点レンズを 2 本持っていくのと質量の面では大きく変わりません。
本レンズのズーム倍率は高くないので、レンズ交換の手間さえ厭わないのであれば、広角と中望遠のレンズがそれぞれ1本づつあれば、似たような運用ができるのではないかと思えてきます。
結局、ズームレンズを選択するということは「明るさ」や「軽さ」を犠牲にして「便利さ」を選ぶということになので、高倍率ズームの絶対的な利便性のほうが単焦点レンズ群との差別化になるのではないかと少しばかり考えてしまったり。
それだけならまだしも、個人的にイマイチだと感じた点は解像度です。
私はボケには拘りがないので、後ボケや玉ボケの形状などは気にならないのですが、レンズの解像度と歪曲だけは気になります。
よく補正されているためか、私が個人的に大嫌いなズームレンズの歪曲は全く気になりませんでしたが、解像度は使っているうちに自分が求めているものとは違うと思えてきました。
ここは一人ひとり求めるものが異なるので「モデルの血管まで写るようなレンズなんて使いづらくて仕方がない」という感想を抱く方も当然おられると思われます。
ボケ、解像度、焦点距離(とくに広角側の 28mm)が気にならないという方であれば、このレンズが1本あれば、ほかのレンズは全く使わなくなるということもあるかもしれません。
歪曲も気にならなく(直線が直線として表現され)、光条も割ときれいに写る(という細かなところまで意識して設計されているほどのレンズです)ので、レンズ自体の素性は極めて良いです。逆光はまあ…
より広角(24mm)でボケ味までも追求するSONY ズームレンズ FE 24-70mm F2.8 GM SEL2470GM、圧倒的な「便利さ」を実現する FE 24-240mm F3.5-6.3 OSS SEL24240 、「便利さ」を追求しながら「そこそこの明るさ」と「画質」も両立している
FE 24-105mm F4 G OSS SEL24105G もこう見ると悪くないですね。
TAMRON 28-75mm F/2.8 Di III RXD は「寄れる」という素晴らしい特性もあるので、単純に質量と焦点距離と開放F値だけでは優劣は付けられませんけど。
ズームという画角の自由度を得ている分、「軽さ」や「明るさ」はある程度、引き換えになるのは仕方がないので、どこで妥協して、どういう使い方をするかによって相性の良いレンズが決まってきます。