最近の読書と電子工作トラブルシューティング

自転車での遠出や山登りができない昨今、自宅で過ごす時間が増えたことから自然と本を買ってきて読む時間が増えました。ここでも何度か記述していたかもしれませんが、私は文章を読むことが好きではないので読書時間は昔から平均の 1/3 未満です。

ただオーディオブックは普通の人の 10 倍以上の時間は聞いていると思います。目で見ても頭に入らないですが聞いたことは覚えている性分です。

しかし困ったことには一般的な日本語書籍にはオーディオブックが存在しません。どこでも手軽に購入できる情報源を活用するためには苦手な読書にも取り組まざるを得ないわけです。

それに加えて、他人より文章を読むのが極度に遅いという私自身の弱点も影響して、読書に費やす時間が日に日に増えています。

最近とくに集中的に読んでいたのは『電子工作・自作オーディオ Tips&トラブルシューティング・ブック』です。


電子工作・自作オーディオ Tips&トラブルシューティング・ブック

趣味として興味がある分野のなかで、とにかく絶賛が多かったので「なにか新しい発見があれば」と思って通読してみました。

筆者は 30 年もの間オーディアンプを自作されてきた電子工作のベテランの方で、本書の内容は筆者自身の経験や失敗を通して得られた問題解決の具体的な手法や手順、初心者が犯しがちな間違いが中心となっています。

トラブルは論理的なものであり、必ずどこかに原因や説明可能な理由がある。異常が発生するのだとすれば、異常が発生するように作ったからであるという理念を持って、回路、熱、ノイズからハンダ不良、キャパシタやスイッチといった部品の取扱にまで触れています。

私個人はオーディオアンプや真空管には触れたことがないので、こんなに電圧が高いものを扱うのかと言った新鮮な驚きもありました。




一方で私自身が無意識に行っていることがベテランの対処法として紹介されていることも少なからずあり、少しばかり困惑したことも事実です。

私はあくまでもセンサを使ってデータを収集し分析することを趣味としているだけで、とても電子工作のベテランとは言い難いですし、自分のことをベテランに分類しようとも思いません。

ところが、この道30年の経験者である筆者がそれらにわざわざ言及し、多くの読者も絶賛しているところを見るに「こうすることは当たり前ではないのか」と通読中に繰り返し考えさせられました。

私は自分で作成したものは基本的にきちんと動くとは思っていないので、全体に組み込む前に部品単体でユニットテストを行い、動作確認をして、作業環境の撮影を毎回やっています。

可能であるならば、そこからブランチを分けて作業環境を保存したいと思っているぐらいです。

データシートは英語で書かれていることは当たり前ですが、ソフトウェアのドキュメントやライセンスなどの法律文書も有効なのは英語版のみで、ほかの言語の文書は「枯れ木も山の賑わい」と大学の教官に教わったぐらいです。

ただし、こう思うのは、もしかしたら私が情報出身だからで、テストコードを書くことは一般常識といった専攻分野のバイアスが掛かっているからかもしれません。

普通に電子工作してる人はそうは思わないのかなと純粋に疑問に感じたところです。

また私に欠落していた部分と言えば、設計において熱を考慮したり、意図的に電力フューズを破壊して過電流から回路を保護する発想で、これらの点では非常に勉強になりました。

この本を読んでいなかったら、もしかたらずっと気づかなかったかもしれません。

これと並行して、最近、暗算能力の衰えや計算方法の忘失を自覚しているので、電話の待ち時間などに少しづつ問題に挑戦しています。


徹底図解 基本からわかる電気数学

とくに存外に楽しんでいるのが『徹底図解 基本からわかる電気数学』です。

ただの教科書かと思いきや、√とはなにか、ネイピア数eとはなにかと深く考えさせられて、そうだったのか!と少し分かった気持ちになります。

私みたいな人間は log は確率計算でアンダーフローを予防しつつ計算負荷を減らすためのテクニック、cos はベクトル空間を利用するための道具(直交したときに 0 になるのが素晴らしいよね)としか思っていなかったわけですが、改めて三角形の辺と面積の関係から√が出てきて、その別表現として指数が出てきて、指数の計算から二次方程式につながって、その分解から虚数が出てきて三角関数につながる流れは美しいとさえ思ってしまいました。

ただ一つ難点がありまして、出版社のウェブサイトを参照しても正誤表が見当たらなくて確信が持てないのですが pp.65 の章末問題 問2 の解答の式が間違っている気がします。

閉回路B について 2I_1 – 5I_3 = 2 … (5) とありますが、ここおそらく 2I_2 – 5I_3 = 2 の誤植ではないかと考えられます。この式 (5) は後続の式 (8) でそのまま引用されているので、著者も見落としたまま計算してしまったのでなければ、私のほうが間違っているかもしれません。

何れにせよ I_3 = 0 となる関係で解答の数値に影響はありませんが、納得がいかなくて私の心の中に引っかかっています。

隙間時間に少しづつ読み進めている関係から、もしかしたら他にも気になる点が出てくるかも知れませんが、こうした数学的な意味を考えさせつつ、電子回路のような現実の問題への応用ではどのように使われるのかを示してくれる本は大変おもしろくて良いです。

まさに知識は使ってこそですね。

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