電子工作に使える『電気のための基礎数学』

電子工作に取り組んでいると避けては通れないものが二つあります。

一つはデータシートであり、もう一つは電気回路です。言い換えるとデータシートと電気回路図さえ読めれば、電子工作を用いて解決できる問題の数も作成できるもの種類も飛躍的に増加します。

『電気のための基礎数学』は電気回路において用いられる計算法を網羅した入門レベルの問題集です。具体的な範囲は一次方程式、二次方程式、行列式、三角関数、指数関数、対数関数、複素数、微分、積分と中学生でも理解できる内容になっています。


電気のための基礎数学 (電気計算法シリーズ)

本書の特徴は、大学出版局の出版物とは思えないほど計算過程がていねいに示されており、また問題文に付随して与えられるヒントが豊富であるです。

電気回路について基礎知識がなくても読み進めることができるように配慮されています。




例えば、環状ソレノイドの磁束密度を求める問題の場合、本書では円周上の磁束密度の式をヒントで与えられますし、トランジスタ増幅回路の電力利得を求める問題では電力増幅度と電力利得が示されます。

これらはヒントなので、必要なければ参照しなくても構いませんが、これらを参照することにより、本書では計算さえできれば解が求められる構成になっています。

もちろん、電気定数などのよく使われる物理定数や力率の計算方法などを知っていることに越したことはありませんし、ヒントを見ないで問題を解けるほうが良いことに相違ありません。

しかし、一方でそうした予備知識がなくても読み進めることができるので、初学者でも難なく読み進められるところが本書の大きな利点です。

予備知識として必要なのは回路図記号についての知識ぐらいなので、一般的な電気回路、電子回路の入門書を一読すれば本書を読み進めるために必須の知識は十分に満たせます。

線形代数や微分方程式といった大学で扱う数学は対象範囲には含まれていないため、特別な事前知識は不要です。一応、電磁気学で扱う静電容量や古典力学の基本原理である運動方程式も出てくることは出てきますが、それと知らなければ気づかないぐらいの扱いで、詳しく知らなくても問題を解けるようになっています。

むしろ下手に物理の知識があるとシンボル Ż が変数 x の時間微分 Ẋ = dx/dt に見えてきてしまいます。これは日本の電気学術界では一般的に複素数を表しているようで、表記について調べていくうちにとても勉強が捗りました。

そうした事柄もすべて把握されていて、いまさら静電界や電流、変電などを除いた電気回路だけの基礎問題集は不要という人以外には大いに役立ってくれると思われます。

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