HUNT ホイール 50 Carbon Aero Disc SL

ディスクブレーキ搭載のロードバイクは重たい。

手で持ち上げてみても重たいですし、漕ぎ出しも重たいです。

前照灯と尾灯とその他の標準装備を取り付けても 7.2kg しかない Canyon Aeroad (リムブレーキ) と比べると「どうしてこんなに重いんだ」と思うほど重たいです。

とくにタイヤとディスクローターを搭載したホイールが重いので、完成車購入時から付属のホイールを交換したくて仕方がありませんでした。

質量・剛性・横風耐性

せっかく新しいホイールを購入するのですから性能と評判の良いものを選びたいものです。

私は基本的には bikeraderTOURCW を参考にしています。

この3つさえ押さえておけば、ホイールに関する情報は必要十分です†。新規に語ることなど何もありません。

当然ながら ZIPP 303 や ENVE SES といった定番どころが期待されている通りの性能を示しているわけですが、面白いのは $900 – 1,500 のレンジの低価格帯ホイールが取り上げられている点です。

実用できる価格で、数も種類も多く、性能はより高価格帯のホイールと比較しても遜色ないものが見つかったりします。

HUNT 50 Carbon Aero Disc もその一つです。

価格と性能のバランスの観点で言えば Parcours Strade (49/54mm) や Bontrager Aeolus Elite 50、SHIMANO WH-R8170 のほうが面白そうなのですが、諸事情があって最終的に HUNT 50 Aero Disc SL に落ち着きました。

Parcours Velo は HUNT や Wheelsmith とよく比較される英国の手組ホイール直販メーカーです。

英国人はあんまり3者を区別していませんが、日本語ソーシャルネットで名前を出すと HUNT だけが突出して食いつきが良いのは何故なのか。

Bontrager Aeolus は TREK のレースグレードのカーボンホイール。SHIMANO WH-R8170 は ULTEGRA ホイールのことです。

12速化してから ULTEGRA グループセットも値上がりしてるので高価と思いきや、ULTEGRA ホイールの実売価格は $1,400 未満と FFWD や Fulcrum Wind と競合できるぐらいに抑えられています。

私が SHIMANO ユーザーだったら ULTEGRA WH-R8170 を買ってたかもしれません。

SRAM XDR

HUNT 50 Carbon Aero Disc SL を選択した理由の一つは、使用しているコンポーネントが SRAM だったからです。

12速の SRAM eTap AXS のフリーハブは XDR 規格の専用品です。SHIMANO 11速や12速との互換性はありません。

HUNT ホイールはデフォルトで SRAM XD/XDR フリーハブボディが選択できるので SRAM ユーザーの購入障壁が低いことが利点です。

Parcours や Wheelsmith でも SRAM XD/XDR フリーハブボディ仕様での注文は可能ですが、2022年11月現在、Shimano/SRAM 11s がデフォルト仕様になっているので、SRAM XDR や Campagnolo をお使いの場合は注文時に要望を出す必要があります。

立ちはだかる納期

性能と予算とコンポーネント (SHIMANO/SRAM/Campagnolo リム/ディスク 10s/11s/12s) との互換性によって候補を絞ると、今度は在庫と納期という現実的な問題が湧き上がってきます。

SHIMANO や MAVIC などのメジャーなブランドであれば、店頭在庫がなければ販売店に問い合わせるしかありません。直販のメーカーになると在庫がなければリードタイムの目安が知れることが多いです。

デファクトスタンダードになっている SHIMANO/SRAM 11s でなければ、そこからハブ組み換えでさらに2週間から3週間、輸送に10日ぐらいの日数を見積もっておくと、だいたい正確な数値になります。

私が9月に注文した即納品だったはずの SRAM 12s カセットスプロケットもブレーキローターも 10 週間後の今になっても、まだ届いていない訳で、昨今の情勢からすると在庫があれば買いです。

なにしろリードタイムの目安は直前になって、さらに数週間から数ヶ月先に伸びることが珍しくありませんので。

そうして順に候補となるホイールを眺めていたところ、ちょうど SRAM XDR 対応の在庫があったのが HUNT 50 Carbon Aero Disc の改良モデルである HUNT 50 CARBON AERO DISC SL でした。

要求スペックは満たしているし、見た目も良いし、もうこれでいいやと購入に繋がりました。

50 CARBON AERO DISC SL

購入したのは HUNT で一番の売れ筋らしい 50 Carbon Aero Disc の改良モデルです。具体的な改良箇所はリムとハブです。

それにともない質量がカタログ値で前モデルよりも 58g 軽くなっています。

リム外径はもともとの 27mm のままですが、内径は 19mm から 21mm に広げられています。DURA-ACE C50 (WH-R9270) も内径 21mm (外径28mm) なので、このあたりが最もバランスが良いのかも知れません。

これまで通り、ビードフック付きでタイヤの種類に制限はありませんが、太さには 25mm から 50mm までの制限があります。

前輪 後輪 合計
カタログ 1,429g
実測 651g 799g 1,450g

不満点

20H/24H

ろくに使用する前から不満を持っているのはどうかと思うのですが、HUNTホイールでもっとも気に入らない点はスポーク数です。

ロードバイク用カーボンホイールの場合、フロント20H / リア24H と市販の完組ホイールと比較して、明らかにスポーク数が少なくなっています。

一般的にはスポーク数が少ないほうが空力が良くなったり、質量が小さくなったりするので好まれる傾向にあるので、好ましいと捉える人も少なくないでしょう。

しかし、個人的には専用品と独自規格というのが好きではありません。

SHIMANO や DT SWISS ぐらい補修部品が安定供給されているのであれば何の不安もありませんが HUNT ホイールの場合は補修部品の市販はなく、英国かコロラドの ITS CYCLING から直販すること前提の運用となります。

リアは 24H なので 240 で組み替えれば良いとして、20H のフロントはモデルチェンジなどの理由で仮にメーカーが取り扱いを止めてしまった場合、代替部品が思いつきません。

もともとスポーク本数の多いディスクブレーキ対応ホイールにおいて、たかだか左右2本づつスポーク本数を減らすことに意義を見いだせないので、ここは標準的な 24H で良かったのではないかと思います。

3 Pawls

HUNT フリーハブは一般的な3爪 (歯止め) です。もっと言うと、廉価ホイールにおいて一般的な機構である3爪です。

市場に出ているホイールのなかでは最も数が多いフリーハブ機構かと思われますが、個人的には大嫌いな規格です。

というのも、スプリングの破断で走行不能に陥る可能性があるからです。

ラチェットのスプリングはその名称から想像されるとおりの形状ではなく、厚さ 1mm 程度の金属製の輪のかたちをしています。

自転車のハブはフリーハブの内側の歯車に歯止めを引っ掛けることで、クランクの回転力をホイールに伝えているのですが、この歯止めを立てる役割を担っているのがスプリングです。

当然ながら走行中に強い力がかかり続けるので、継続使用による金属疲労でスプリングは前兆なく破断することがあります。

そうなると歯止めが歯車に引っかける力がなくなり、クランクを回してもハブが空転するようになるわけです。

廉価ホイールであればスプリングが損耗する前に本体ごと使い捨てにしてしまうので問題ありません。

問題はわざわざ別売の高価なホイールを購入したときに、この機構がついてくる場合です。

なにしろ前兆なく破断するので交換時期が読めません。

安全性を考慮するのであれば 10^4 km ごとにスプリングを交換しても良いかも知れませんが、使用者の体重、出力、気温、整備状況によってはもっと長持ちするので判断が難しいところです。

ああ 240 で組み替えたい

満足点

品質管理

完組ホイールを輸入すると少しばかり振れてたり、バランスが狂ってることは珍しくありません。

市販品のハブとスポークで組まれた手組ホイールに留まらず、大手コンポーネントメーカーが製造して小売店で店頭販売されているようなホイールでも見られることです。

普通に使用していても振れるものなので、自分で調整すれば良いだけのことなのですが、HUNT ホイールに関して言えば箱から出した状態で既に完璧でした。

リムの形状も真円に近く、スポークも十分なテンションの高さで均一に張られていました。

自転車業界はちょっとあれなので、購入した状態のままで本来の性能を発揮できる製品を見ると感動を覚えてしまいます。

メンテナンス性

HUNT ホイールはリムテープ採用でニップル外だしです。

昨今はチューブレスタイヤ採用のためにリムのニップルホールが嫌われる傾向にあるので、ディープリムでニップルホールがあるホイールは敢えて選ばないと見つからない選択肢です。

チューブレスレディを実際に使用してみてメリットを感じなかったこと、ニップル内蔵による空気抵抗の改善なんて誤差みたいなものじゃないかと思ってることから、この仕様は嬉しいところ。

なにしろメンテナンスや修理が容易です。

ニップルは DT 互換でスポークは台湾製の Pillar なので調達の面でも問題ありません。

使用してる鋼材がスウェーデン製 Sandvik T302 というところから PSR-XTRA AERO を使えば、おそらく純正と同じ部品で補修も可能です。

Parcours や Reynolds などの競合ホイールの大半が SAPIM CX-Ray もしくは CX-Sprint (FFWDだけは一部 DT AEROLITE/ AERO COMP) を採用しているところ、Pillar で組んで実績を残しているところには好感を覚えます。

静音性

私が使っているホイールは基本的には DT SWISS です。

SHIMANO や MAVIC や Camplagnolo のホイールも 5,000km ぐらい試用していることもありましたが、結局、使っているのは DT ハブのホイールばかりです。

完成車に付属してきた P1800 SPLINE DB も DT SWISS 製です。

このホイールはエントリーグレードらしく、HUNT と同じ3爪フリーハブなのですが、同機構を採用している HUNT と比較しても明らかに大きく甲高いラチェット音が出ます。

いつもは3爪なんて使わないので、あまりの音量にグリスが切れているんじゃないかと思って一度分解しまったほどです。

常用しているスターラチェットハブは、これはこれで擦れるような重低音が出ます。

もはや聞き慣れてしまっていましたが、HUNT ホイールと比較してみるとそのラチェット音の大きさに驚かされます。

相対的に HUNT ホイールのラチェット音は控えめです。もちろん、SHIMANO や MAVIC ほど静かではありませんが、許容できるぐらいには静かなことは良いことだと素直に思います。

使用感

タイヤは Continental Grand Prix 5000S 28mm 空気圧は推奨最高値の 100psi で運用しています。

この状態で時速 25kph 以下の低速では、ロープロファイルのアルミリムホイールとの走行性能の違いが分かる人はほとんどいないと思われます。

ディスクブレーキローターが付属してるだけあって、限界までスポーク本数を減らしたリムブレーキ仕様のカーボンホイールのような漕ぎ出しから感じる軽さを実感することは難しいです。

明らかに違いを実感できるのは 35kph 以上の速度域や向かい風の状況ですが、注意していれば 30kph ぐらいでも加速感と回転の滑らかさを感じられると思います。

低速ではアルミリムとあまり変わらない印象を受けると書いたように比較的しなやかで硬さを感じさせないホイールです。

リムブレーキのカーボンホイールで、調整次第では踏み込むとシュータッチするような横剛性や 60mm 超のディープリムに慣れきってしまっているので、剛性や横風についてはとくに思うことはありませんでした。

レースで使ってみないと分からないだけかもしれませんが。

一方で目論見通りに軽量化できたかという点では微妙なところです。

50 Carbon Aero Disc SL 自体はディスクブレーキ用の 50mm ディープリムのなかでは非常に軽量なホイールに分類されます。

他社のチューブラータイヤ用カーボンホイールと比較できるぐらい軽量で、これ以上を求めるのであればカーボンスポークなどの特殊なホイールばかりになります。

そういう意味では実用できるカーボンホイールのなかでは最上級なのかもしれませんが、体感ではその軽さを意識できる機会はあまりありません。

このあたりもスポークを増やしても構わないのではないかという考えにつながっています。

それ以外の点では弱点らしい弱点は見つけられなかったので、逆説的にその性能の高さをよく理解できます。

ほどほどにディープな 50mm に、全天候対応のディスクブレーキ、幅 25mm (100psi) から 50mm (40psi) までのタイヤ(空気圧)を使い分けられる万能性と、走行性能と使い勝手のバランスで言えば今までに所有してきたホイールのなかでも一番かも知れない実力を有しています。


† 発売されたばかりの新商品はレビューされるまでに時間がかかるので、厳密に言うと最新の情報を集める目的にはあまり向いていません。

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