HUNT 50 Aero SL を導入した理由は、そこそこ軽量で日常的に使いやすいホイールを求めていたためです。
せっかくカーボンリムを使いやすいディスクブレーキを導入したのに、ロープロファイルのアルミホイールを履かせていては雰囲気が出ません。
端的に述べると、走行性能の改善は見込んでいたものの、そこまで劇的な変化は期待していなかったわけです。
そんな細やかな期待に反して、このホイールは予想を上回る性能を見せて使用者を驚かせてくれました。
このホイール、凄いんじゃないんか。
そう思ったのは斜度 10% 超のダウンヒルに持ち出したときでした。
正直なところ、リムブレーキ車のハイエンドモデルの走行性能を知っている身からすると、一般的な手組のディープリムホイールに感動することは珍しいです。
普通に軽いですし、よく回ります。
足を止める必要のない大陸の無人地帯を時速 18mph 以上で走っていると、ホイールの性能を如実に意識させられます。
素性の良さは感じられますが、それだけです。
ただ、このホイールがそれだけで終わらなかったのは、コーナリングの安定性が格段に向上していたからです。
車体を寝かせても不安を感じさせず、狙ったとおりに曲がれるので苦手意識を持っていたダウンヒルに余裕を感じられるようになりました。
ブレーキ性能がリム素材の影響を受けないディスクブレーキであることも合わさって走行感はまるで別物。
これに比べるとリムブレーキのロードバイクは本当に何だったのかと思えるような変わりぶりです。
内幅 21mm という大胆な新設計のワイドリムは確かに効果があることをまざまざと実感しました。
正直、いくらエアボリュームを増やそうがロードバイクは MTB のようにはなりません。
ストイックな乗り心地はレースモデルであることを感じさせますし、快適性の向上を謳っていても効果を実感できる場面はほとんどありません。
そもそも、タイヤの空気は抜くよりも、入れるほうが遥かに大変なわけで、サポート車の代替や修理を期待できない我々、一般人は空気圧を高めに入れて、その場の気温や路面状況にあわせて抜きながら調整するほうが自然なわけです。
空気圧を下げるとパンクリスクも高まりますし、タイヤ幅が広がって空気圧を下げられるようになっても、安全マージンをとって高めで運用するほうが精神衛生上の利点が大きいのです。
そんなわけで今までワイドリムのありがたみを感じた記憶はなかったのですが、HUNT 50 Aero SL を使用するようになってから意識が少し変わりました。
逆に言えば、ワイドリムもこれぐらい思い切った設計にしなければ、あまり利点を感じにくいということなのかもしれません。
私が長期間使用している Reynolds Strike (リムブレーキ) も内幅 17mm 外幅 25mm で定義的にはワイドリムに分類されますが、コーナリングで違いを意識できるほどの差をナローリムとの間で感じませんでした。
これに 25mm タイヤを履かせたときにタイヤ幅は 25 – 27mm 程度の太さになります。
正確に述べると Continental – Grand Prix 5000 (25mm) では個体差で 25.0mm から 25.4mm 程度になります。
Grand Prix 4 Season はもっと太めで 26.5mm から 26.7mm 程度になることが多いです。
このあたりがリムブレーキで安全に使えるタイヤの限界値に近いです。
これ以上の太さのタイヤはモデルや個体によってはブレーキキャリパーに干渉することがあります。また、ナローリムに装着しても変形してしまって、本来の性能を引き出せません。
それに対してディスクブレーキの HUNT 50 Aero SL に Grand Prix 5000 (28mm) を履かせるとタイヤ幅は 28.8mm から 29.4mm ぐらいの太さになります。外幅 27mm のホイールがそれを支えます。
これぐらいのエアボリュームがあるとブラインドテストをしても感じ取れるぐらいに操作性が変わってきます。
驚いたので計測してみたところ、リムブレーキでは 25mm 程度だったタイヤ幅が 30mm 近くに変わっていたわけです。
実際にダウンヒルに持ち出してみるとコーナリングの安定性が向上して、下りの走行に余裕を感じるようになりました。
ロードバイクの走行中でもっとも危険なのはダウンヒルなので、この部分のストレスが軽減されることは大きなメリットと言えるのではないでしょうか。
というわけで、ヒルクライム大好きで週に 1,000m 以上は登っている人には、このホイールの恩恵は大きいです。
平地での巡航速度だとか、横風耐性、乗り心地といった部分ではあまり大きな違いは感じません。
大型車とすれ違えば煽られますし、路面が荒れていればしっかりと振動が伝わってきます。
ロードバイクらしいと言えば、らしい乗り心地かもしれません。