さっさとリコールしろという話

よく割れるクランクアームの話です。

巷ではガルバニック腐食が生じているなんて言われていますけれども、個人的には極めて懐疑的です。

ここでも過去に何度もアルミ嫌いを公言していますけれども、自転車でガルバニック腐食なんてほとんど聞きません。もし聞く機会があるとしても古い部品の固着ぐらいではないでしょうか。最近のモデルでは見なくなったボトムブラケット下のケーブルガイドのボルトとか。

なにしろ発生条件が電位の異なる2種の金属を電解液に浸すことですので、まず水分があることが必要条件です。

クランクアームが腐食するほど濡れるのであれば、もっと腐食していないとおかしい部分があります。ステンレス鋼のスポークと接触しているアルミニウムニップルです。

このブログではホイールを壊しては自分で補修したり組んでいたりするので、アルミニウムのネガティブな話ばっかり出てくるわけですが、ホイール組みでガルバニック腐食を避けるためにアルミニップルの使用を控えるなんて話は聞いたことがありません。

米国北部の州に住んでいて毎日のように融雪剤の溶けた水のなかを走ってるのでもない限り、聞かない話だと思われます。電位差が少ないから真鍮を選ぶなんて話もまず聞きません。

クランクアームと地面に近い (最近はリムに内蔵される場合も多いので一概にそうとも言い切れないホイールも増えてきましたが) ニップルを考えたとき、水分に長時間触れて腐食しやすいのは果たしてどちらでしょう。

ホイールでもあまり聞かない腐食をクランクアームで発生させるなんて、どういう使い方をしているのか、興味本位で聞いてみたくはあります。

どちらかと言えば問題があるのは使い方ではなくて、製品の設計にあるのではないかと疑うほうが自然です。

完全な噂ですが、市場に流通している製品の不良率が 0.6% もあるという信じられない話まで出ています。つまり流出率 6000ppm です。

さすがに眉唾ものですが、もし本当の話であるならば、その製品は欠陥品です。

同じ道路を走る自動車業界では不良率は ppm 管理が常識化されています。

不良率 0.6% = 6000ppm です。

分野にもよるでしょうけれども、一般的に耳にする不良率はせいぜい 0.006% = 60ppm から 0.06% = 600ppm 程度ではないでしょうか。つまり生産数 10 万につき不良品数 6 から 60 程度です。100ppm を下回れば、だいたいの分野において極めて優良です。

それを念頭に置いたとしても、不良流出率 6000ppm なんて、まず聞いたことがないと思います。

もし堂々とこんな数字を出してるのであれば、個人的にはその製造工程がまともだとは思えません。

製造工程に問題はない?だとしたら欠陥があるのは設計ということになりませんかね?どっちなんですかね。

自動車業界の話を自転車業界に持ち込むのはおかしいと思われるかもしれませんが、アマチュア競技者であってもレース中の瞬間最高時速は 75km/h を超えています。

これは2022年に日本で開催されたある市民レースのオープンクラス優勝者の実際の走行データです。

こんな速度で走行中にクランクアームが折れたとしたら死亡事故につながってもおかしくありません。

プロの選手であれば、速度も出力もそれ以上となります。

歴代のツール・ド・フランス優勝者の全ステージ平均時速は 40km/h 前後です。瞬間速度に至っては 120km/h 以上の記録が出ます

よく割れるクランクアームは日用ではなくレース用途を謳っているわけで、そうした使用に耐えることを想定していなければなりません。自動車業界と同等程度の品質基準を満たしていて然るべきというのは誇張ではないのです。

レース使用に耐えないとしたら不当表示というまた別の問題がでてきますが、それは置いておくとして、いい加減な 品質検査基準で市場に不良品を流出させておきながら、それを専門の検査員でもない販売店に点検させて、安全性を保証できるのかどうかは甚だ疑問です。

作業標準どうなってんの?もちろん照度基準と標準温度ぐらい当然に設定してるんだろうな?と責任者を問い詰めたいところではありますが、一番の問題は点検の結果、異常なしと判断されればそのまま継続使用という点です。

いま割れているクランクアームは、出荷前に万全の体勢で行った検査に合格したものです。

十分に安全基準を満たすと判断され、割れる直前までは異常なしと区分されたものだけが市場に流通しているわけです。

それでも一定数が割れてる。言い換えると、自社ですら良品と不良品の区別ができていなかったと自白しているのと何も違いません。

どうして専門家でもない販売店に外部委託した簡易点検で、将来にわたって安全に使用できると言えるのか、きちんと説明してくれませんかね。

もし目視で安全と判断されたクランクアームが走行中に破断して、それが直接の原因となって人身事故が生じたら、安全と断定した製造者または作業者が責任を負ってくれるという理解で良いのでしょうか。

そんな自転車には公道を走ってほしくないですね。

安全性に問題のある車両の不良品は事故が起きる前に全数回収するのが当たり前です。

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