前日から危惧されていた台風は、明け方に虹を残して道央を通り過ぎていきました。
後から振り返って見ると、結局、「一日ズレていたら飛行機も飛ばないほどの荒天」でも「いつも晴れの日を引く」という、私にとっては非常に見慣れた結果に終わりました。
こういうときは、何故か、いつも、いつも晴れるのですもの。
そう言えば、北海道に来るときの船も前日まで荒天で出航が危ぶまれていた気がします。もはや、遠い過去の出来事のように感じますね。
この天気と風速であれば、遅延はあっても出航しないということはないとは思われましたが、今回は当日になるまで運行状況は確定していない状況であったので、私が苫小牧に残って船の状況を確認することにしました。
温泉好きの丹下さんは、早朝から近隣の温泉を目指されてライドに出られました。
私は長風呂が得意ではないですし、長年の癖で湯船に石鹸を入れたくなるので、温泉は遠慮しておきました。
その代わりに時間が許す限り、好奇心の赴くままにソビエトの宇宙船を鑑賞します。
苫小牧の周辺にはいくらでも見るものがありますので、その気になれば一週間ぐらい楽しめます。
時刻が10時過ぎぐらいになると、ようやくフェリーの通常運行が告知され、これを持って当日の船での帰還が決まりました。
いよいよ北の大地を離れる瞬間が近づいてきます。
正午過ぎに苫小牧港を訪れてみると、仙台行きの船に乗り込む二輪車が駐車場に隙間なく並べられていて、フェリーターミナルも混雑気味でした。
苫小牧航路のフェリーは出航の3時間近く前から乗船手続きが始まります。
自転車や二輪車、自家用車の場合には貨物室への車両の積み込みもあるので、出航の1時間から30分ぐらい前が実際の乗船時間です。
車両甲板から自転車を押して船に乗り込み、上階の客室や展望デッキに登って出航を待ちます。このとき、埠頭を見下ろすと、貨物を積み込むトラックの様子が眺められます。
やがて出航準備が整うと、大きな汽笛を鳴らして巨大な船が動き出します。
展望デッキに集まる人につられて、カモメの群れが飛び交い、海岸の釣り人や見送りの人が大きく手を振ります。
予想外が続いた北海道の旅もここでお終いです。
日の出も日の入りも早い北海道では、夕暮れ時の出港時は既に薄暗く、辺りの景色もよく見えなくなっていました。
翌日、目を覚ましたときには、美しい東北の海岸線が拝めました。
温帯低気圧に変わった台風の置土産なのか、帰りの船は行きの船よりも揺れましたが、ベッドに横たわっていると、それが気持ちよくて良すぎるぐらいに良く眠れました。
おかげで水平線から浮かび上がる日の出を見逃すことになりましたが。
日の出と船の南下によって、気温と湿度はじっとりと上昇し続け、窓越しに見える岸辺の起伏が徐々に平坦になります。
徐々にカモメに群れが近づいてくると、うっすらと防波堤が見えてきました。
着岸したさきの大洗は日差しが強く、焼け付くように暑く感じます。
「まだ夏なんだ」と口にした途端、本州に戻ってきたことを感覚的に理解しました。
記事には書いていませんが、自転車を持って船で北海道に行ったからこそ、さまざまな出会いに恵まれ、なぜか Strava のフォロワーが増え、北海道のツーリング文化に触れるという稀有な体験まですることができたのだと思います。
来年の自分が何処にいるのかは分かりませんが、可能であれば真夏にまた北海道自転車旅に出たいと思います(つぎは後志と道北)。
おわり