真夏の北海道自転車旅 (11) 富良野の再会そして台風の足音

道内でもっとも標高の高い道路である十勝岳を登り終えても、今回のライドはそれだけでは終わりません。

「美瑛」や「富良野」と言った場合、通常は十勝岳のような本格的な山岳道路は含まれず、『四季彩の丘』や『新栄の丘』といった丘陵地帯の一面の花畑を意味していることが多いです。

せっかく伺ったのですから、こちらにも立ち寄らないわけには参りません。

自転車の速度で走り抜けてみると、美瑛の起伏の激しさ、空に続いていくかのような上り坂、高台の上から見渡す素晴らしい展望が本当によく見えます。

ヒルクライムに慣れていないと大変かも知れませんが、二輪車乗りの方が絶賛されるのも納得の光景です。




『四季彩の丘』を超えると長い下り坂を経て、富良野盆地に入ります。

美瑛から富良野は位置的にも隣同士ですが、景観的にも統一感があって一体に見えます。

しかし、ここで驚いたことには富良野は空知郡、上川盆地の南に位置する美瑛とは成り立ちが違うようです。

空知と言うと石狩平野の北東にある砂川とか滝川とか深川 — 神奈川県で例えると県央の町田と県西の小田原のあいだの「県民でもあまり知らない」市町村がいっぱいあるところ、つまりは札幌都市圏の辺縁、石狩、道央という印象を持っていたので、夕張山地の東側の富良野まで空知というのは、少しばかり驚きでした。

足柄峠と湖尻峠と箱根峠の東側は神奈川県なのに、熱海峠の東側だけは静岡県みたいなものでしょうか。

気候にも差があり、富良野盆地は快晴で低湿であっても、石狩平野の岩見沢まで行くとむせかえるほど多湿で暑かったりすることもあります。

このときは台風の影響もあってか、岩見沢で一気に気温が 10℃ 近くも上昇し、長袖のサイクルジャージを着ているだけで汗が滲み出てくるほどでした。

ここに至るまで気温は 10℃ から 18℃ が当たり前になっていて、毎日、長袖ジャージにインナーを重ね着していたところ、岩見沢から気温 28℃ 超が普通になってしまい、夏服の現地調達まで考えねばならなくなりました。

ところで富良野には、どうしても行きたい場所がありました。

北海道産の食材を使ったイタリア Restaurant & Pension La Collina です。

中富良野のラベンダー畑の近くにある評判のお店で、絶品のイタリア料理と一緒に名産の富良野メロンや富良野ワイン、自家製のヨーグルトが頂けます。

口コミでの評判も良く、富良野を訪れることに決めた時点で、食事と宿泊は「ここしかない」と思いました。

事前に連絡すると宿泊時に自転車も室内に置かせて頂けました。現地で出会ったツーリストのおすすめ情報に間違いはありません。

ここで数日ぶりに丹下さんとも再会します。

美幌峠で分かれて以来、なんでも快晴の知床峠を無事に攻略してから、自走で石北峠を越えて来られたのだとか。

この短期間に道東縦断に加えて、羅臼から旭川まで 300km の道東横断まで成し遂げてしまわれる行動力をあらためて尊敬してしまいました。

北見から石北峠を越えて旭川に至る経路上には、層雲峡などの見どころがあり、大雪ダムのダムカードも回収されていて、なかなかに楽しそうでした。

美味しいイタリア料理とペンションを堪能したあとは、輪行で苫小牧まで一気に進みます。

函館方面の特急の運休やフェリーの欠航が報道されるなか、道東よりも 10℃ 高い気温と台風の起こす強烈な南風(つまり逆風)を受けながら、自転車を漕ぐのも辛いものがあります。

加えて、海沿いを走る室蘭本線と国道 5,36,37 号線が台風によって仮に被災した場合、函館までの移動手段がなくなってしまう懸念もありました。

現段階では新幹線をつかう予定は無いにしても、船や飛行機の運行状況を知るためにも早いうちに道央に到着しておいた方が良いという判断です。

長らく続いた北海道自転車旅も、いよいよ終わりを迎えようとしています。

つづき

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