グラベルバイクの王道 CANYON Grail AL 7.0

CANYON Grail AL について述べるべきことは何もありません。

最初はそう思っていました。いや、今でもそう思っていますけれども、グラベルバイクのあるべき姿とはこういうものではないでしょうか。

レース用途から離れた純粋なファンライドのためのジオメトリ、悪路でも悪天候でも安心して走行できる信頼性、ロードバイクのように神経質に扱わなくても良く、MTB のように運搬に頭を悩ませ無くても良い取り回しの良さ、壊れてもいい値段、Grail AL は全てを兼ね備えています。

だからこそ、思ってしまうのです。

ほかのグラベルバイクを購入した人も全く同じことを思っているのではないかと。

GT GRADE, Bombtrack Hook, KONA ROVE, Cannondale Topstone など、現在の市場には多種多様なグラベルバイクが溢れており、私が Grail AL を購入したのはほんの偶然です。あ、いや、運命の出会いでした。




運命の出会いとは

先記事に記述した通り、自転車の供給低下と世界的な需要増によって年単位で在庫が払底している CANYON は私の購入候補から外れていました。

昨年購入したはずの MTB も納期延長の連絡が来るばかりで、未だに到着していません。

これから注文するバイクときたら、注文できるようになるまでに数ヶ月、そこから受注生産をはじめて、納車時期は何時になるのかも分からないという状況です。

ところが、この状況でも突発的に在庫が復活して、即納商品として販売されることが極稀にあります。推測するに注文から納車までの間にキャンセルされた商品が1台限りで販売されているのではないかと思われます。

それに気がついたのは部品構成の比較のために商品ページを眺めていたときです。

「買えるじゃん」とは思ったものの、そのときはベアリング等の消耗品の規格やジオメトリを把握していなかったので見送り。数分後にページを更新してみたときには注文ボタンは無効になっていました。

次に即納在庫を見かけたのは、付属してくるタイヤの銘柄の確認しようと思ったときです。ただし、この時はフレームサイズが適合しなかったので注文はせず。

これだけロードバイクやグラベルバイクの店頭在庫が枯渇して、人によっては DURA-ACE や GRX の部品入荷を数ヶ月も待ち続けているのに不思議な巡り合わせを感じます。

もし今度、偶然に即納在庫を見つけたら、それを運命の出会いと呼ぶことにして購入しようというルールを定めたら、2週間後に実行することになってしまいました。

グラベルに求めるもの

私がグラベルバイクに求めるものなど、じつは数点しかありません。

しかし、現在のロードバイクでは、これを満たせるものがほとんどないのは前記事のとおりです。繰り返しになるので詳細は記述しませんが、メーカー取り寄せしないと補修部品すら入手できないアドベンチャーバイクって、どのあたりがアドベンチャーに適しているの?と思うぐらい自転車業界を信用していません。

そんな私が新車に求めることは、ボトムブラケットが最低でも BB86 であること、油圧ディスクブレーキが SHIMANO 製であること (他社製が悪いわけではなくブレーキフルードが各社とも専用品なので MTB と消耗品を共有すると SHIMANO しか選べない)、 アヘッドステムやハンドルやシートポストがフレーム専用品ではないこと、そしてディレイラーハンガーが安価で供給も安定していることです。

たった、これだけです。

そして、それらを突き詰めている Grail AL は、だからこそグラベルバイクの王道です。

サスペンションや専用設計の特殊部品は何一つありません。

ただ良い部品を使って「普通のバイク」を妥協せずに組み上げています。

フレームやフロントフォークを除いたほぼ全ての構成部品が汎用品なので、このバイクだからこそと言った特別性もありませんが、かと言って大きな癖もありません。

強いて言えば、ジオメトリ設計が2019年のものなので、設計自体が少し古くて、タイヤクリアランスも 700 x 42C / 650 x 42 までしかありません。

5年以上も昔はタイヤ幅の最大は 700 x 35C ぐらいのモデルが多かったので当時は普通だったのですが、現在だと 650 x 47 等のタイヤが市販されているので、ただでさえ少ないタイヤの選択肢が他の車種よりもやや少なくなります。

それから発売当初は存在していたシートステイのバイクラックマウントは消滅したので、現在の市販モデルにはありません。

メディアの過去記事には掲載されていますので、何のことだか分からないと思われる方はそちらを参照してください。まあ、現在のモデルにはないんですけれども。

パニアバックが非推奨になった反面、最近の CANYON はバイクパッキングを推奨しています。それはもう、完成車を購入するとバイクパッキング用のフレーム保護ステッカーが付属してくるぐらいです。

また Topeak に特注された Grail Bike Bag という商品も別売されており、そちらは Grail の大きさや形状に合致する専用品になっています。

走行性能

Grail AL を最初に手に持ってみたとき、その質量に驚きました。

想像していたよりも、ずっと軽かったからです。金属フレームに太いタイヤとディスクブレーキを備えていながら、リムブレーキ仕様のクロモリバイクよりも 2kg 近くも軽量化できているのはフレームの軽さなのか、コンポーネントの差なのか。

しかしながら、ホイールもタイヤも重くて加速もあまり良くないので、空気圧だけは舗装路上 65 – 75 psi で運用しています。自己責任でやっていることなので、体重が重たい方やバイクパッキングで荷物を大量に積載する方は真似しないでください。

フレーム自体に対して特別感じるものはありませんでしたが、フロントフォークだけは素晴らしいの一言です。このフロントフォークだけで「購入して良かった」と言い切れるほどの直進性と旋回の安定性が体感できます。

この極太フロントフォーク、Aeroad にも欲しいぐらいです。

コーナリングやダウンヒルの安心感が全く違うので、これに慣れた後でロードバイクに乗るとハンドリング性能に不安を覚えます。

これにはスルーアクスルとクリックレリーズの違いも多分にあるかもしれません。




ディスクブレーキ

グラベルバイクの最大の特徴はシクロクロスの 33mm を越えるタイヤ幅、それを実現させているのがディスクブレーキです。

ロードバイクでディスクブレーキが搭載されたとき、その性能に感動して「もうリムブレーキには戻れない」という人も結構いましたよね。

私はと言うと、じつはあんまり感動しませんでした。

「なんか ULTEGRA BR-6800 とそんなに変わらない… 雨天でなければ」と感じて、ディスクブレーキ車からリムブレーキ車に戻る人、「リムブレーキで十分」と主張する人の気持ちが分かってしまいました。

MTB のディスクブレーキからしてそうだったのに、グラベルバイクのディスクブレーキで感動するほどの変化は残念ながら経験できませんでした。ブレーキパッドの小ささに驚きはしましたけれども。

一方でグラベルバイクに付属してきた 38mm 幅のタイヤはダウンヒルで大活躍しています。最近、転職した影響で崖みたいな坂の近所に一時的に住むことになっているのですけれども、これがもうロードバイクだと全然楽しめないんですよ。

急勾配な上に交通量の多い坂に事故を誘発する危険なグルービング加工が施されていて、25C ぐらいの細いタイヤではグリップを失って転倒しそうになります。

これがグラベルバイクだと安定して下れるとまでは言えませんが、緊急停止でもしっかりと止まることができます。この精神的な余裕はかなり大きいので、とくに未舗装路に行く予定はなくてもブロックタイヤで登りに行くことが日常化しています。

オフロード走行

これまで述べてきた通りのバイクなので、オフロード走行性能はタイヤに強く依存します。そのタイヤの最大幅も上述の通り、現在の基準ではそれほど太いわけではありません。

タイヤを除くと、オフロードバイクらしさはチェインクラッチ付きの GRX コンポーネントぐらいしか見当たらないのも、このバイクの特徴です。

そこで登場する Grail AL の切り札が、ダウンチューブ下部に位置する3つ目のボトルケージマウントです。

ここに空気入れを設置することで、オフロード走行時にタイヤの空気圧を思い切りよく下げることができます。

タイヤのオフロード走行性能は空気圧を下げてみないと正しく評価できませんので、オフロードを走るなら空気圧はいつでも調整できるようにしておかなければなりません。

そこでオフロードは 45 psi 程度で走行することにしていますが、行ける場所は技量次第な感があります。シクロクロスはもっと細いタイヤで砂、泥、木の根、シケインに対応しているわけで、それを考えるとこの手のバイクでは十分な走行性能なのかも知れませんけれども。

ちなみに私は当初はもっとオフロード寄りのバイクなのかと思っていたので、ペダルは SPD を選択しました。その結果、オンロードを割と快適に走れるバイクだと分かったので、今ではペダルをフラットか SPD-SL に変更しようかと本気で悩んでいます。前記事で述べた通り、SPD の舗装路での使い心地は今ひとつなので、現状ではシューズ選択の自由度が低いという短所ばかりが目立っています。

完成車で購入して、最初に変更したいと思っている部分が後付のペダルというのも、完成度が高いということの証左なのかもしれませんけれども。

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